HOME / FUNK / LINK / maggot / map

まごれびゅ

 
 あいうえお順INDEX 



 マイケル・ウィンターボトム『アイ ウォント ユー』 (1998 英) ★★★☆


サスペンスというほどでもないけど、いちおうサスペンスですか。殺人の罪で刑務所に入っていたマーティン(アレッサンドロ・ニヴォラ)が仮出所して戻ってくる。彼は9年前に恋人ヘレン(レイチェル・ワイズ)とやってるところをヘレンの父親に見つかり殴り殺したのだった。一方、移民でロンドンから流れてきた姉弟の弟のホンダ(ルカ・ペトルシック)は、母親の自殺?のショックで言葉を失ってしまい、ひたすら盗聴をするヲタク少年。姉のスモーキー(ラビナ・ミテフスカ)はクラブシンガーで奔放で男をとっかえひっかえ。姉のセックスまで弟のホンダは盗聴している。盗聴して、それをオカズにしてオナってるわけでもなくて、とにかくひたすら盗聴。ってこれってやっぱり異常だよねぇ。まだオカズにしてるほうが救いがある。
そのホンダのアンテナにかかったのがヘレン。ヘレンの現在の恋人のDJのボブとのクルマでの「ねぇ、やろうよ。やらしてくれよぉー」って会話を盗聴して、それをボブが担当しているラジオ番組にオンエアさせるというのは、なんとも異常だワ。あのですねぇ、このホンダに対して、けっこう贔屓めの演出になってんだけど、心情的にホンダって可哀想なんだってね、そういうふうにもとれるんだけど、これってどうなんだか。むしろ、そういうトラウマを持った障害者を残酷に描いてるような気がする。結局、事件の当事者でありながら安全なところに逃げ込んでしまう。
安全なところというと、姉のセックスを盗聴しておきながら、彼はいつだって姉のところに逃げ込む。姉は姉で奔放な行き方の代償として弟ホンダを抱え込んでやる。一種の姉弟で互いの傷を舐め合ってやってるような。移民の人間はそうでしか生きてはいけないんだとつき離してるのならいいんだけど、ウィンターボトムはこれをどうとらえてるのか曖昧。曖昧だからいいのかもしれないけど。
で、ヘレンのもとに、ホンダが現れ、そしてかつての恋人マーティンが、仮出所の禁を犯して会いに戻ってくる。かつての恋人どうしだった、そしてマーティンの犯した殺人事件に多かれ少なかれ当事者であったはずのヘレンの描かれ方も残酷といえば残酷。それは過去のことだったとしてしまおうとするヘレンも、ある意味で残酷でしょ。ホンダがちょうど14歳で、その事件が起ったとき自分も14歳で、彼(マーティン)はちょうどいまのわたしの歳だと。つまりマーティン=へレンの関係が、男女を逆にしてヘレン=ホンダの関係だというのは、現在の自分に対する自己弁護をやってのけてるわけで、ほんとうに可哀想なのはマーティンなんだよねぇ。
結局のところ残酷にならないと生きてられないってところなんでしょか。つらいなあ。
それはさておいて、マーティンが戻ってきて、風俗にやりにいくシーンでかかるのが、エルビス・コステロの"I Wnat You" う〜ん、やっぱりつらいなぁ。意に反してなんかここが一番がつーんと来たよ。それと姉のラビナ・ミテフスカがクラブで歌ってるところな。そして撮影は、キェシロフスキーの『青の愛』や『ふたりのヴェロニカ』のスワヴォミール・イジャック。うんうん、この映像にははめられてしまう。

I Want You
監督 マイケル・ウィンターボトム
製作 アンドリュー・イートン
脚本 エワン・マクナミー
撮影 スワヴォミール・イジャック
衣裳 レイチェル・フレミング
編集 トレヴァー・ウェイト
音楽 エイドリアン・ジョンストン
出演 アレッサンドロ・ニヴォラ / レイチェル・ワイズ / ルカ・ペトルシック / ラビナ・ミテフスカ / カルメン・イジョゴ / ベン・ダニエルズ / ジェラルディン・オロウ / フィリダ・ロー


↑投票ボタン




2004年07月18日(日)
 ≪   ≫   NEW   INDEX   アイウエオ順INDEX   MAIL   HOME 


エンピツ投票ボタン↑
My追加