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 マイク・リー『秘密と嘘』 (1996 英, 仏) ★★

 正直言って、こういう類の話はあまり見たくないんだよねぇ。かいつまんで書いておくと、シンシア(ブレンダ・ブレシン)は、父なし子のロクサンヌ(クレア・ラッシュブルック)との二人暮し。そのシンシアの前に、わたしはあなたの娘です、とホーテンス(マリアンヌ・ジャン=バプティスト)が現れた。そのことでシンシアの弟モーリス(ティモシー・スポール)夫婦も一体となった「秘密と嘘」の家族の破局から一転ハッピーエンド。。。。。
 この映画、どうしても目はブレンダ・ブレシンに行ってしまうのだけれど、ボクが興味深かったのは、弟モーリスが営む写真館に家族の写真を撮りに来る人たち。写真っていうのは、その瞬間を切り取ってしまうのだけれど、それはその瞬間にすぎないのだ。そうして、シャッターが切られるその前後に見せる顔、家族、人間の有り様というのは多様なんだよということを描き出している。
 この弟を写真屋に設定したというのは、非常に意味があると思う。いみじくも修羅場でモーリス自身が、自分は人の幸せを写しだす仕事をしているのにと嘆く。ところが、写真は「秘密と嘘」を封じ込めてしまうものでもある。試しに、自分の結婚式の写真を引っ張り出して見るといい。
 ん〜と、そんなところまで議論しないとダメですかぁ。単純に善良な写真屋でいいじゃないですか。でもな、家族のスタートとなる結婚で、100人が100人、「秘密」を抱え、「嘘」をついて結婚するのだから。「秘密」を持たない「嘘」のない家族って、どんなに気持ちが悪く、おぞましいことか。
 強引とも思えるストーリー展開で、ボク的にはマリアンヌ・ジャン=バプティストを隠されていた娘としたことがとてもイヤだな。必要性を全く感じないし、ブレンダ・ブレシンが演じれば演じるほど、マリアンヌ・ジャン=バプティストが娘であったことに強烈な違和感を感じる。そして、こうしたひとつの決着点をつけないとTHE ENDマークを出すことができない、よりその過激な展開をあまりにリアルに描き出すことで、あらたな『秘密と嘘』を生みだすこと。「嘘」というのはパラドックスなんだよ。
 キューブリックが性悪説なら、マイク・リーは性善説なんでしょう。

Secrets & Lies
製作 サイモン・チャニング=ウィリアムズ
監督・脚本 マイク・リー
撮影 ディック・ポープ 
音楽 アンドリュー・ディクソン
出演 ブレンダ・ブレシン / ティモシー・スポール / フィリス・ローガン / クレア・ラッシュブルック / マリアンヌ・ジャン=バプティスト / エリザベス・バーリントン / リー・ロス



2003年12月22日(月)
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