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■ クシシュトフ・キェシロフスキー『殺人に関する短いフィルム』 (1987 ポーランド) ★★★★
きっつぅーーい一本。正直なところ、へこたれちまったよ。『愛に関する〜』の延長で見たりすると、とんでもない。リアリズムのこわさってかねぇ、とにかくカメラ視線の冷酷無比きわまりないのだ。もうこれでへこたれる。評価的にすげぇーとわかっていても、★5つつける元気など根こそぎもってかれたようなね。いやぁー、映画って、ほんとこわいですねぇ、さよなら、さよなら、さよなら・・・・・・・・をひ (-。-;) 『愛に関する〜』ではね、確かにまともなラブなんて描いてないよ、だけど「愛」だからね、どこか安心して見てられた。そして、をーこの光がぁーなどとのけぞってられた。とことが「愛」が「殺人」に替わるだけで、同じようにカメラがぁーなどと見ていたら、確かにね、この『殺人〜』では何10枚ものフィルターが用意されたっていうんだけれど、そのフィルター効果を楽しんでられるのは初めのうちだけで、徐々に映しだされる映像の冷酷さに、そんなフィルター効果などと言ってられる余裕はなくなってくる。頂点は河原で人間の頭ほどもある石を打ち下ろす殺人シーン。吐きます。いや、日頃ね、血がどびゅっとか小馬鹿にして、あんなものどこがこわいんだなどとうそぶいていても、いざこうしてリアルにつきつけられると、ほんものの怖さ、嫌悪感が先立ってしまうものなのね。それはラストの絞首刑シーンでもそう。『ダンサー・イン・ザ・ダーク』(あれはこの映画からのパクリは歴然!)のゲホゲホ感というのはほんとうにイヤだったけれど、あれはある意味でカリカチュアして見ることができた。アホくさぁーってね。ところが、この『殺人〜』では、真っ向から「暴力」というものに対峙しているし、それに見ている者を、引っ張り込んでそれに対峙させるだけの力を持っているから、なんとも言い様がないのです。 ポーランドのいなかから出てきた無目的な青年ヤツェック(ミロスワフ・バカ)、理想を追い求める新人弁護士(クシシュトフ・グロビシュ)、それと自己中おやじ丸出しのタクシー・ドライバー(ヤン・テサシ)が、ワルシャワ(?)の寒々とした町の中ですれ違って、そしてこの殺人で一点に集まってしまう。問題の殺人が起るまでの短いカットを三者三様に繋ぎ綴った描写の凄さにはほんとうに舌を巻くものがある。ただ、殺人が起ったあと、そこもそれなりの救いのある見せ場が続きはするんだけれど、なんせ、へこたれてしまったから。個人の暴力としての殺人、社会の暴力としての死刑、このような問題に真剣に取り組むのなら、ほんとうは、リアルに描き出した映像こそ必要なのはわかっていてもです。 これも、TV映画として作られた『デカローグ』の第5話の劇場公開版。 ボクのことを言うと、やっとのことで『デカローグ』全10話(ビデオ5巻)入手したのに、その直前にビデオデッキ故障で見れてないのだ(T^~)クゥ- そしたら、DVDが一挙にこの12月に発売になったみたいね。 「これにて閉廷」 「これで終わりですか?」 「終わりだよ」
KROTKI FILM O ZABIJANIU 監督 クシシュトフ・キェシロフスキー 脚本 クシシュトフ・キェシロフスキー / クシシュトフ・ピエシェヴィッチ 撮影 スワヴォミール・イジャック 音楽 ズビグニエフ・プレイスネル 出演 ミロスワフ・バカ / クシシュトフ・グロビシュ / ヤン・テサシ
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2003年12月10日(水)
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