あいうえお順INDEX 



 杉森秀則『水の女』 (2002 日) ★★★


 監督の杉森秀則が、UAに惚れて、UAのために作った映画。台本に《for UA》とまで書かれてあるらしい。UAってのは、ライブでのMCとかでしゃべってるのを聞いてもわかる通り、笑けてしまうくらいのずぶの大阪弁で、そのUAに芝居をさせたところで、お世辞にも上手いというわけなくて、ひどくベタ(ヘタでなくてベタ)な演技なんだけれど、監督が惚れたとおりに、そんなのを越えてしまう不思議なキャラクターを持っていて、それがこの『水の女』でも十分に引きだされてはいる。
 スタートはUA自身がすごい雨女で、ロスでも雨を降らせたくらい、そこからインスピレーションで『水の女』=名前のどの字にも水が入ってる清水涼(UA)と《火の男》=清水涼に対して思いきりベタな名前の宮澤優作(浅野忠信)の出会いとなった。その場が風呂屋。できすぎてるでしょ。
 話の流れとしては別に文句はなくて、それはそれでおもしろいんだけれど、どいうわけか退屈。例えば「いつまでもおったらええやん。ずっと…」「きみはウソつきや、いつまでもなんてのはない」というようなやりとりとか、富士山に雨がしみ込んで湧き出るまでに100年かかるのは人間みたいだとか、こういうのってなんかこそばゆいんよねぇ。
 それと絵を作りすぎてるんだよ。雨粒をずずずーーーーっとズームアップしていって、その雨粒に二人が映る、のなんてその典型。だいたいズームしていくっていうカメラワーク多くないか。天地をひっくり返したのもそう。逆さまになって見ているというのを描き出したというのはわかるけれど。だいたい作りすぎた絵っての見ていて結構飽きるもんなんだよなぁ。テレビドラマの演出としては相等キャリアを積んでいる人のようだけれど、テレビドラマと映画とでは見る側の集中度が違うのだから、テレビのように集中させるための演出は映画では逆にうるさくなる。タイヤに火をつけて転がすシーンなんかあったけど、ひどい違和感を感じてしまった。過剰演出でしょ。
 HIKARU、ジュディマリのYUKI、江夏豊、ぼんちおさむ、流山児祥といったあたりの異色なキャスティング。ちなみにボクの大好きな大久保鷹の名前があるのだが、富士山ということで太宰治(笑)で出演してたはずなのだが、演技の質が極端に違うからか、編集段階で鷹のシーンはカットされてしまってる。DVDのディレクターズカットで陽の目を見てはいるけれど。UAを含めてそのような異色なキャスティングと、浅野忠信は別として、キーになってるはずの小川眞由美なんかはかしっとした演技で締めてほしいんだけれど、妙に浮いてしまって、なんだかなぁ。確かに小川眞由美にあのような演技をさせたいってのはわかるけれど、他とのバランスってものあるでしょ。ちうか、異質な顔ぶれをまとめあげれなかったとこちゃうのかな。
 
 
監督・脚本・編集 杉森秀則
プロデューサー 甲斐真樹 / 根岸洋之
撮影 町田博
美術 林田裕至
衣裳北村道子
音楽 菅野よう子
録音 林大輔
出演 UA / 浅野忠信 / HIKARU / 小川眞由美 / 江夏豊 / YUKI / 大浦龍宇一 / 都家歌六 / 頭師佳孝 / 塩見三省 / 流山児祥 / 川又邦広 / 町田忍 / 松島一夫 / ぼんちおさむ

↑投票ボタン




2003年11月30日(日)
 ≪   ≫   NEW   INDEX   アイウエオ順INDEX   MAIL   HOME 


エンピツ投票ボタン↑
My追加