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 大島渚『白昼の通り魔』(1966 日) ★★★☆

 あれって、いわゆる山村工作隊だよなぁ。確かじゃないけど、大島なら、山村工作隊になぞらえたところで全く不思議じゃない。40年近く経った今となっては、その普遍性は風化してしまってるけどな。あ、すいませんねぇ、いきなり山村工作隊などとわけのわからんことを書きだして、興味ある人は自分で調べて下さいませ。
 信州だったかな、山奥の村のコンミューンを水害が襲って、協働で経営していた家畜場、畑などが流される。これを回復させるのにシノ(川口小枝)は、村長の息子源治(戸浦六宏)に金を借りる。こういうスネオクンをやらせると戸浦六宏ってほんまはまる。その借金のかたにというのも変なんだけど、源治はシノをやってしまうのね。ところがお坊ちゃまは、中学教師のマツ子(小山明子)のほうに気がある。肉体の欲望のほうはシノで処理して、美人(そりゃそうだ、大島渚の嫁だもん)だしいちおう地位をあるマツ子をと、いかにもお坊ちゃまでしょ。そのお坊ちゃまは美人の小山明子にプロポーズするのだが、美人は取りあわない。それなら自殺してやる、とどこまでもお坊ちゃま。さらにお坊ちゃまスネちゃまなのは、山の中に首縊りに入るところで、シノを誘って、「相惚れなら一緒に死ねるはず」なんて心中を持ちかける。
 さてここに本能のままに生きる男=英助、これが佐藤慶というのも納得、納得。納得どころか、佐藤慶のルーツはこれにあり。見よ、あのギトギトした目つきを。さて、美人・マツ子は、お坊ちゃまが山に入ったので見てきてくれと、あら、ま、美人はお気楽だ。自分で見に行けよ。山の大きな木に縄をかけて心中決行。が、これを見ていたのが本能男=英助。そこで何をやらかすかというと、お坊ちゃまは見捨てて、シノを助け出し、気を失っている間に犯してしまう。つまり半屍姦ってやつです。こうして「白昼の通り魔」の誕生。
 犯されたシノは村を離れる。その真相を知った美人・マツ子は英助を咎めるも首を絞められ、気を失ったところを犯される。シノのように村を離れることができないマツ子は、すべてを知りながら、英助と結婚。かくして悲劇の再生産の始まり。屍姦に味をしめた本能男・英助は、家を出て、各地で「白昼の通り魔」となるのであった。
 ま、ざっとあらすじを書いておきましたが、シノの川口小枝というのは武智鉄二の娘で、これがデビュー作。というわけか、下手っぴ。特に方言でしゃべらせるともう棒読みで。それはいいとして、この40年間に社会的に変わってしまってるのがなんとも辛い。山村の状況とか、「聖」の部分として描かれている中学校がね、ちょっといま見るとくすぐったい。だいたい、この4人の立場ってのは、いまの時代に心情的に理解しにくくなってるので、そこらあたり全てさっぴかないと。
 その上で目まぐるしく変わるカット割りなんて、初期大島渚そのもの。ふっと見過ごしてしまいそうなカットだらけで、映研なんて言うてる大学生は一度は見ておきましょう。でも一般的にはやっぱり現在の目からするとこの話ってようわからんよな(苦笑) ま、よくぞ、こんなのを松竹が配給したとあきれ返る。あぶない、あぶない。。。。
  ↓ しかしこのスタッフ、すごいなぁ


製作 中島正幸
監督 大島渚
助監督 佐々木守
脚本 田村孟
原作 武田泰淳
撮影 高田昭
音楽 林光
スチール 吉岡康弘
出演 川口小枝 / 小山明子 / 佐藤慶 / 戸浦六宏 / 小松方正 / 渡辺文雄 / 観世栄夫 / 殿山泰司

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2003年11月03日(月)
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