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 デヴィッド・リンチ『ストレイト・ストーリー』 (1999 米) ★★★★★

 《デヴィッド・リンチ=『ツイン・ピークス』》なんて思い込んでいたら、思いきり足もとをすくわれる。はは、きっちりボクもその公式にはまってね(^_^ゞ 最初のシーン、ごく平和なアメリカのど田舎、平和そのものの情景が映しだされた家の中で、どさっと人が倒れたような音がする。そら、始まった、こういうふうに見せておいて、ふっと落としてくれるのが、リンチっぽくって良いのだぁ〜なんてね。困ったもんだわ。
 さて『ツイン・ピークス』からさっさと離れましょう。家の中でぶっ倒れたのは73歳の爺さんアルヴィン(リチャード・ファーンズワース)。ファーンズワースは1920年の生れだから、実年齢より少しだけ若い役。あまり聞いたことなかったから、AMGで調べてみると、どっちかというとTV俳優だったんだ。そして2000年に亡くなっている(合掌) ということはこの『ストレイト・ストーリー』が彼にとっての遺作のような存在でもあり、もっともラストに《アルヴィン・ストレイトに捧ぐ》とテロップが入るところからこれは実話らしく、後からくる世代に語り継ぐ、アルヴィン・ストレイトの、そしてリチャード・ファーンズワースの遺言でもあったんじゃないか。
 自分ごとになるんだけれど、もう6年前、ボクが45歳だったときに、夏の3週間かけてバイクでオール下道で日本一周をしたことがある。その時に周りの友だちたちは「よくやるよなぁ」となかばあきれ返ってたのだけれど、九州から北上して行って宗谷岬にたどり着いたとき、その気になれば意外と簡単に走れるもんだなと思った。そのことを「走り続けたら着く」なんて言葉で表現していたら、博多のモッチャンは「まごさんは走り続けてるでしょうが、ボクは歩き続けますよ」と返したのだった。
 ボクはこの映画を見ていて、しみじみ速さというのは大切なことなんだなと思ってしまった。一番小さいトラクターで500kmの道を走り続ける。たぶん歩くより少し速いくらいだろう。
 また自分ごとになるけれど、ボクはカヌーにも乗っていた。カヌーといっても急流ばかりを攻めるようなアグレッシブなカヌーではなくて、流れに身をまかせるばかりのカヌー。いわゆるファルトってやつ。そのカヌーで最も心地よいのが速さ。ちょうど人が歩く速さより少しだけ速いような流れに身をまかせているときの心地よさというのは、こればっかりは乗ってみないとわからんかな。
 だから、トラクターで、500km離れた兄に会いに行くとアルヴィンが言い出したときには、やられたぁと思ってしまった。あ、もちろん、そのときには《リンチ=『ツイン・ピークス』》という公式からすっかり離されてしまってましたよ(笑)
 いちおう映画だからね、その道中にはあれやこれやと話を織り交ぜないとアカンのですが、爺さんのお話ですから、そりゃ人生訓であったり説教臭かったりするわけで、妊娠して家を出てきた娘に話しかけるくだりなんかはね、それが全く違うところで語られるのなら、けっと思ってしまうんだけどな(苦笑) まじひとつひとつの話が、ボクのような邪悪な人間には窮屈なんだけど、やっぱり、《オン・ザ・ロ−ド》なんですよ。《オン・ザ・ロ−ド》だってことで、つい聞き入ってしまう。バイクで走り回ってるときに、出会って何がいちばん楽しいかというと、可愛い女の子でなくて、ジジババ。爺婆の話がいちばんおもろいのだよ。半分、何言うとんのかわからんときがあるけど(笑)
 ちなみにこの爺さんの娘、といっても50くらいだが、これがきのうアップした『イン・ザ・ベッドルーム』のシシー・スペイセク。同じ人には見えませんが、こっちのほうがずっといいよなぁ。同じノミネ−トされんだったら、こっちでノミネートされればいいのに。

 さて、あと20年経ったら、トラクターに乗って、昔の女に会いに行くかな。途中で焚き火できるところがいっぱいあればいいんだけど...
 

THE STRAIGHT STORY
監督 デヴィッド・リンチ
製作 アラン・サルド / メアリー・スウィーニー / ニール・エデルスタイン
脚本 ジョン・ローチ / メアリー・スウィーニー
撮影 フレディ・フランシス
音楽 アンジェロ・バダラメンティ
出演 リチャード・ファーンズワース / シシー・スペイセク / ハリー・ディーン・スタントン / ジェームズ・カダー / ウィリー・ハーカー / エヴェレット・マッギル

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2003年10月06日(月)
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