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 ロベルト・ロッセリーニ『アモーレ』 (1948 伊) ★★★★☆

 なんともすさまじい映画、凄みのある映画とでも言うておきましょう。これは2本の短編『人間の声』と『奇蹟』とからなっていて、別にこの2本に関連があるわけでなく、元々は1本目の『人間の声』だけできあがっていたところ、公開するにあたって、2本目の『奇蹟』を撮ったそうです。
 順を追って、まず1本目の『人間の声』。35分ほどだけど、がしがしに凄いのであります。ジャン・コクトーによる一人芝居として書かれた戯曲を元に、ロッセリーニの当時の嫁さん(?)、かの『無防備都市』のアンナ・マニャーニが、ほとんど電話に向かって、泣いたり喚いたり、しかも別れの愁嘆場なのでありますねぇ。出てくるのはマニャーニ一人なので独壇場というのは当たり前なんだけれど、電話の相手の声もほとんどなくて、微かに声が聞こえてくるけれど、というより、電話の相手が男だという音だね、まさに片側だけを見せる、ただそれだけで、35分間もたせるどころか、見る側を引きずり込んでしまう。しまいにゃ、電話の相手は見ている自分じゃなかろうかとまで思わせて、もう凄いのなんの。終わったときには、ふーーーっと長いため息が出てしまうのでした。
 はい、2本目、行きます。付けたしだからといってあなどってはいけない。こちらもアンナ・マニャーニで、村人からバカにされている浮浪者然の女。その女が浮浪者の流れ者を預言者ヨゼフが現れたと勘違い。この流れ者を演っているのがフェリーニ。意外とやさ男なんだねぇ、フェリーニ。その流れ者自身がヨゼフだと名乗ったわけでなくて、勝手に預言者ヨゼフが自分の目の前に現れる奇蹟が起ったと勘違い。フェリーニはほとんどセリフなくて、1本目の『人間の声』に引き続いて、マニャーニの一人芝居。一方的に「預言者ヨゼフ」に向かって、神への愛を語りかけるわけで、『人間の声』で一方的に男への愛を語りかけるのと、対比が凄いんだわ。
 さてその「預言者ヨゼフ」は、マニャーニにひたすらワインをすすめ、酔いつぶれたマニャーニを犯して、さっさと消え去る。数ヶ月後、マニャーニは、「預言者ヨゼフ」の子を妊娠してしまう。そんなマニャーニをネオレアリズモ村人群集は村から追いやってしまい、山の上の幻覚の中の教会で神の子を産む。フェリーニの一捻り、二捻りも効いたカトリック批判も凄いけれど、独りで出産するマニャーニの演技の凄さに、別の神の顔が見えてきたりして、なんていうと大袈裟かもしれないけれど、いやすごいの。ただただ、アンナ・マニャーニの凄さに見入ってしまうばかり。

L'AMORE
監督 ロベルト・ロッセリーニ
製作 フェデリコ・フェリーニ / ロベルト・ロッセリーニ
原作 ジャン・コクトー
脚本 フェデリコ・フェリーニ / ロベルト・ロッセリーニ / トゥリオ・ピネッリ
撮影 ロベール・ジュイヤール / アルド・トンティ
音楽 レンツォ・ロッセリーニ
出演 アンナ・マニャーニ / マガリ・ノエル / フェデリコ・フェリーニ
★★★★☆



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2003年07月17日(木)
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