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 武智鉄二『白日夢』(1981 日)

 この武智鉄二ってのはどうもよくわからん。ボクが武智鉄二を初めて知ったのは、まだ中学生だった。『黒い雪』で女を全裸で走らせて猥褻罪で訴えられたというもの。実際、今にいたっても、その『黒い雪』は見ていないのだが、当時マスコミでけっこうセンセーショナルに報じられていたし、何よりも全裸の女を野外、米軍基地のフェンスに沿って、走らせたというのは非常に刺激的だった。後にこの『黒い雪』裁判は無罪となったが。その次が高校生になっていたのだが、トイレで制服を着替えて『浮世絵残酷物語』を見に行った。もちろん成人映画で高校生は見させてくれなかったのだが、やたら裸が出てくるくせにオナニーのおかずにもならなかった(汁)
 武智鉄二というのは歌舞伎の実験的演出を試みて、武智歌舞伎と呼ばれているらしい、らしいというだけでそれ以上、武智鉄二に入っていくこともなくて、武智鉄二の名前も忘れかけていたときに、ぽっと出てきたのがこの『白日夢』。
 64年に路加奈子主演の『白日夢』がヒットしているらしいのだが(さすがにこのことは当時知らなかった)、武智自身によるリメイクで、愛染恭子主演で本番映画としてマスコミが騒いだ。どうもね、マスコミが騒ぐのは武智ポルノばっかりで、どうにも武智歌舞伎と繋がらないんだよなぁ。現実に武智歌舞伎のファンというか、武智歌舞伎を後押しする人にも、彼がなんでこうした映画を撮るのか理解に苦しんでるようね。一説には金持ちのボンボンの道楽だとも。
 さて、本題というか、本番ですね(^◇^;) この80年になるかならないかという頃はようやくレンタルビデオ屋が世の中に登場し始め、レンタル料が1本1000円などと、今から考えると法外な値段だった。もちろんハリウッドの映画など借りるのでなくエロビデオですよ。しかしエロビデオでも本番などやってなくて、すべて疑似。疑似だから、当然のことながら、その結合部分は見せられない。見せると、猥褻罪で捕まる以前に疑似ということがばれてしまう。で、この『白日夢』では本当に挿入したという。本番の本番、ああややこし、つまり本番シーンの撮影のときになって、肝心の佐藤慶が勃たなくて、愛染恭子がフェラチオして勃たせたんだと、愛染恭子自身が言ってるのを聞いたことがある。 うわっ、全然れびゅになっとらんね(^◇^;) ちょっとれびゅらしいことを書いてみますが、佐藤慶ってのはピッカピカの大島渚常連の性格俳優でしょ。彼の演技に対する気概は敬服に値するんだけれど、この本番シーンというのは演技になってないんだな。演技をしようとするよりも勃起状態を継続させようというほうに神経が行ってしまっていて。それと根っからの役者である彼はあくまで演技しようとしているのだけれど、求められているのは現実の行為で、そこのところの境界線が混乱しているのがありありとわかる。もちろんその当時であっても、裏ビデオやブルーフィルムといった類では実際に挿入してるのだけれど、それはあくまでもやってるのを撮ったもので、現在のウスケシと同じで、だれ一人として役者である必要がないんだね。ここに武智鉄二の意図したものとのジレンマが生じる。武智鉄二の意図したものを作りだすためには、強力な役者が必要だった。だから佐藤慶。ところがその相手となる女優で本番よしとする女優なんていない。宮下順子でさえノーだろう。そこで愛染恭子。ところがこの芝居がどうにもならない。セリフしゃべらせれば最悪。喘ぐ表情だけはいいんだがね。どこかにロマンポルノの女王などと書かれていたが、ウソだよぉ。愛染恭子って、この『白日夢』で本番演った女優として持ち上げられただけで、ここに佐藤慶と愛染恭子のアンバランスな芝居ができてしまったというわけ。武智鉄二が意図するものを演じてくれるような女優なんて、いまの世の中でさえいない。かくしてその意図するものはもろくも崩れ去ってしまう。そこへもってきて長回しだもんね。かの本番シーンの長さったら、ずっと佐藤慶が射精するのを待っていたとしか思えないね。あ、エスカレーターのシーンも長かったな。愛染恭子の身体のラインは日本的で嫌いじゃないけれど、尻のラインのまずさをあんだけアップでとらえたらダメでしょ。
 
 
監督・脚本 武智鉄二
原作 谷崎潤一郎
撮影 高田昭
音楽 芝祐久
美術 小沢秀高
出演 愛染恭子 / 佐藤慶 / 川口小枝 / 勝然武美
★★



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2003年06月18日(水)
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