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 ▼ 林海象『夢みるように眠りたい』 (1986 日)


 サイレント映画への林海象のオマージュ。
 というわけで、全編にわたって疑似サイレントで突っ切ってます。佐野史郎なんて一言もセリフ発してないでしょ。かつてあってラスト直前で中断されてしまっているサイレント映画『黒頭巾』の中へ溶込んでいく。その話の展開・構成とかの面から見るとすごくおもしろかった。
 夢と現、どちらが夢でどちらが現かと、それは判然としなくなるというのは常套手段だけれど、いちおう、探偵魚塚(佐野史郎)が現のサイドでしょ。このサイドをもサイレントにしてしまったこと、これがずばりはまってるんだよね。サイレント映画に仕立てることで、佐野史郎、どことなく演技的にぎこちない。それも言ってみればサイレントであることによると言ってしまっていいのかも。夢のサイド、つまり黒頭巾のほう、これははじめ、何かからの引用なのかと思えるほどのもの。実はそのパートも新しく撮ったもので、映像処理が施されている。をいをい、処理しすぎってもんだろ。
 かと思えば、大正末期の世界を引きだしてくるのに、仁丹はキーになってるからともかくとして、花王石鹸、カルピス、もうひとつ何だっけ? その看板が3連発で出てきたのには、逆に興ざめしてしまう。あまりに時代をシンボル化させて表現しようというのはどうも好きになれない。そのようなものをあからさまに出してこないでも十分に時代として感じられたのに。
 ただね、こればっかりはどうにもならないんだけれど、佐野史郎にしろ、大泉滉でも、あがた森魚でも、やっぱり現代の顔をしているんだよ。顔を見知ってるからというわけでなく、骨格的に現代の日本人なんだよなぁ。そういうふうに見ると、櫛屋の櫛屋草島競子がいちばんはまってたか。遠藤賢司が駄菓子屋、十貫寺梅軒が回転屋、そして安保由夫(ったってほとんど誰も知らないだろうな)君が軽業師とちょい役で出ててうれしかった。


製作 一瀬隆重 / 林海象
監督 林海象
脚本 林海象
撮影 長田勇市
美術 木村威夫
音楽 浦山秀彦 / 熊谷陽子 / 佳村萠 / あがた森魚
出演 佐野史郎 / 大竹浩二 / 佳村萠 / 深水藤子 / 吉田義夫 / 松田春翠 / 大泉滉 / あがた森魚
★★★★



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2003年01月14日(火)
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