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 ▼ ジョゼフ・フォン・スタンバーグ『西班牙狂想曲』(1935 米)


 ボクにはまずこの『西班牙狂想曲』より先に『欲望のあいまいな対象』があって、ついそれと見比べてしまうわけ。『欲望の〜』のほうに書いたけど、ピエール・ルイス『女とあやつり人形』が原作。もちろん原作も読んでないです。すんまそん、と謝る必要などないか。
 コンチータがアントニオ(『欲望の〜』ではマチュー)を手玉に取る、いたぶりまくるということにかけては、ブニュエルの『欲望の〜』のほうが数段上。というのも、『欲望の〜』ではブニュエルがマチューにのりうつっていた(だからこそ、ブニュエルは自分の懐刀とでもいうべきフェルナンド・レイをマチューに使っていたと言えるのだけれど、はっきり言って、『欲望の〜』は男の立場から見た物語。それに対して。この『西班牙狂想曲』は語り手こそ、男ではあるけれど、女の立場から見た物語だと思った。
 そりゃそうだ、マレーネ・ディートリヒだもん。彼女を使うからには女を描かなければウソでしょ。そしてそのためには、豪華絢爛、当時としては考えられないほどの道具立てでマレーネ・ディートリヒを飾り立てなければ。この道具立てのすごさは、いまのちょっとしたハリウッド映画だって到底太刀打ちできない、すごい、すごい。こんなセットをよく作れたなと感心することしきり。それから衣装にしてもそう、ディートリヒだけすげえ衣装というのならともかく、エキストラ然とした隅々に至るまで気の配りようは大変。それでもディートリヒばかりに目が行くのは当たり前ですけど。
 モノクロなのがほんともったいないくらいの装置、美術。もちろんモノクロはモノクロでいいんだけど、カラーだとどんなにすごいかと想像してしまう。ただカラーになったら薄ぺらくなってしまうんだろうなという気がしないでもないんだけどね。ただ豪華さにスペインの空気は薄れてしまってるのも事実で、邦題は『西班牙狂想曲』でも原題はそっけなく『The Devil Is a Woman』とスペインのかけらもなく、ただ原作がスペインだったからそのまま持ち込めるものは持ち込んだという程度なんでしょ。見るほうも、とにかく『モロッコ』からスペインに舞台を移したとしか見てないからいいか。このマレーネ・ディートリヒを見てると、ブニュエルが二人一役などという反則技を使ってしまうのも頷けるな。
 あ、そうそう、ディートリヒがアヒルを抱きかかえてるのは笑えた。思わずブニュエル!

The Devil Is a Woman
製作・監督 ジョゼフ・フォン・スタンバーグ
脚本 ジョン・ドス・パソス / S・K・ウィンストン
原作 ピエール・ルイス
撮影 ジョゼフ・フォン・スタンバーグ / ルシアン・バラード
音楽 ラルフ・レインガー / レオ・ロビン
出演 マレーネ・ディートリヒ / ライオネル・アトウィル / シーザー・ロメロ / エドワード・エベレット・ホートン / アリソン・スキップワース
★★★★



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2002年09月10日(火)
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