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 ▼ ウォン・カーウァイ『花様年華』 (2000 仏,香港)


 どういうわけだか、多分にオンナ入っておりますので、メロドラマは大好きです。あぁもうこれはばりばりの真性メロドラマなのであります。マギ−・チャンのまなざしに胸きゅんきゅんきゅきゅん。いわゆる柳腰っていうやつですね。あの腰のラインを見ていると思わずぎゅうっと抱きしめたくなるというか、フェチってしまうのでありました。
 なんでこのようなメロドラマが日本ではできないんだろうな、とつくづく思いましたよ。ヨーロッパ・アメリカあたりでは無理です。いきなりベッドインしてしまうのがオチ。じわぁ〜〜んとした、ことばとことばの間の間がたまらない。フランス映画ではその間にぎっしりことばを詰め込んでしまうでしょう。ましてやハリウッド娘の情感じゃないんだよ。
 さてと、独り語り的会話というたらいいのか、例えばトニー・レオンがチャンを訪ねて行ったとき、その玄関先でチャンの旦那がドアの内側、そしてトニー・レオンがドアの外側でで話をするシーンがあるんだけれど、このときチャンの旦那は声だけで姿が全く見えない。まるでドアに向かってトニー・レオンが独りでしゃべっているような。つまりここでトニー・レオンが独りで芝居を演っていて、チャンの旦那の声ははあとから編集で挿入されたんじゃないかと思える、そのようなシーンが、逆にチャンのシーンでも何度か見受けられた。これってひとつの演出だなぁと思うわけ。
 もうちょっと書いておくと、チャンの旦那とトニーの嫁さんとができてしまってる、いわゆる不倫関係にあって、そのことにこのあぶれた同士の二人が気づいてというメロドラマなわけ。ここでチャンの旦那とトニーの嫁さんは徹底して不在のうちに、このメロドラマが進行していく。実際にこの不倫な関係の二人はマスクされてしまっていて、その不倫そのものがマスクされている。その上で、あぶれた二人の不倫とも言えない心の動きをよりくっきりと表すことにカメラが向けられたんだと思う。
 ところで、カメラの方は当然のことのように、クリストファー・ドイルなんだけれど、ちょっとあざとすぎるというか、彼のカメラに見慣れてしまって、普通なら、をーをーと悦に入ってしまってた映像が逆にわざとらしくしか感じられなくなってるのがちょっと淋しい。ボクとしてはカメラより音のほうに行かれこれで、「花様的年華」の音をぶちぎった電話の音、そしてやっぱりバイオリンですね。
 というわけで、うんうんと何度も頷いて、思わずオーバーラップさせてしまっておるのでした。もう秋なのか...

Fa yeung nin wa
製作・監督・脚本 ウォン・カーウァイ
撮影 クリストファー・ドイル / リー・ピンビン
美術 ウィリアム・チョン
音楽 マイケル・ガラッソ
出演 トニー・レオン / マギー・チャン / レベッカ・パン / ライ・チン / スー・ピンラン
★★★★





2002年08月30日(金)
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