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 ▼ アッバス・キアロスタミ『オリーブの林をぬけて』 (1994 イラン)


 さて宿題のアハマド少年は立派に生きていた。よかった、よかった。と、『友だちの〜 』の主な出演者はほとんど無事だという幸運はあまりにできすぎのような、ひょっとしたら、『友だちの〜 』の出演者はコケル現地の人たちでなく、主だったところはテヘランから連れていったってこともじゅうぶんにありうる。いやきっとそうかもしれない。
 さて《ジグザグ道三部作》と呼ばれるこの三作目は、二作目『そして人生はつづく』の途中の村でキアロスタミ監督(ファルハット・ケラドマンド)親子が水をもらいに行った家で、地震の次の日に結婚したという新婚の夫婦、ホセイン・レザイとタヘレ・ラダニアンの話。
 つまりメイキング『そして人生〜』を映画としてやってのける。そのために『そして人生〜』の監督をモハマッド・アリ・ケシャバーズに設定、このケシャバーズ監督がキアロスタミ監督自身(ファルハット・ケラドマンド)が出演しているという設定の『そして人生〜』を撮るのをキアロスタミ監督(出てこない)が撮る。なんともややこしい設定。それでこの『オリーブ〜』は出演者をすべて実名にして、よりメイキング『そして人生〜』に見せかける。そしてすっかり成長してしまったアハマド少年は映画の撮影を見学に来る少年として出してくる。思うにキアロスタミ監督はこういう二重、三重構造が好きらしい。映画制作という現実を虚構いすることで、その製作の中でのラブストーリー=虚構を現実に見せかける。見てる側は、ホセインはタヘレに想いをよせているのが現実だとまんまと騙される仕組み。しつこいくらい繰り返される『そして人生〜』の撮影シーンのうちに、撮影の裏側でのホセインのタヘレへの想いが虚構から現実へと化けていく。タヘレの指がノートの端にかかる。オリーブの林を抜けるときには誰もそれが虚構なんだとは思ってない。そしてジグザグ道。
 一言で言えば、騙されることがこれほど快感だとは

 タヘレの胸には花の鉢植え、遠く引いたカメラが捕らえる点となったホセインとタヘレ、これらは『友だちの〜 』、『オリーブ〜』と通して見たときにさらになるほどと思わせもするが、ちょっとしつこさも感じてしまう。どうなんだろ。それと車のバックミラーを2度使うだろ。『友だちの〜 』のアハマド少年をこういうふうにしか描けなかったのかなぁ。ホセインがタヘレを追ってオリーブの林を抜けていくときにちらっと監督が写しだされる。あれだって、その前の監督の一言で十分わかっているのに、くどさが目について、とにかく図抜けていい作品だけに、ちょっと残念な気がした。
 

Zire darakhatan zeyton
製作・監督・脚本 アッバス・キアロスタミ
撮影 ホセイン・ジャファリアン / ファルハッド・サバ
出演 ホセイン・レザイ / モハマッド・アリ・ケシャバーズ / タヘレ・ラダニアン / ザリフェ・シバ
★★★★☆



2002年08月06日(火)
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