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 ▼ アッバス・キアロスタミ『友だちのうちはどこ? 』(1987 イラン)


 イラン児童青少年知育協会のもとで子ども向けに作られたとは言うけれど、なかなかどうして大人にがつーんと来る。
 小学校2年生のアハマドは間違えて隣の席の子のノートを家に持って帰ってしまう。その子はつぎに宿題をやってこなかったら退学にするぞと先生に言い渡されているのだ。だからそのノートはどうしても今日中にその友だちに返してやらなければならない。というわけで『友だちのうちはどこ? 』と、友だちの家を探して歩くという、ただそれだけの話。
 友だちの家を探して歩く(走る)間に様々な大人に出会う。大人の論理に出会っていく。この『友だちのうちはどこ? 』では、大人の論理を検証していく、そういう意味でたぶんに子ども向けの映画というより、もう立派に大人に対して放たれた映画だと思える。
 だから大人たちの論理のちぐはぐさがいい、なんていうのも変だけどとにかくおもしろい。ここで大人の論理というのが、子どもに対して、理不尽なもので、完璧に負けなのかというと、そうでもなくて、大人には大人の事情があり、そしてそれは親の世代、祖父母の世代で異る。一見、大人は子どもの事情などにお構いなく大人の論理を子どもにふりかざしているかに見えるけれど、それぞれが自分自身の事情の中で生きていくのに精いっぱいで、相互の事情がかみあわないだけ。
 素人ばかりの出演者(あえて俳優とはいわない)、もちろんアハマド少年のそばかすだらけの顔が可愛いとかを通り越してすごくいいし、ロバでとっとことっとこ走っていくおっさんもいい。そしてそのまんまのロケ地の集落やそこの人々の生活臭ぷんぷん臭う、それらが映像で伝わってくる。とくにアハマド少年が夜になって出会う爺ちゃんとの掛け合いがとてもほのぼしていい。「人生なんてそんなに長いのか」という爺ちゃんの言葉にはぐさっと来るね。ボクはやっと家に帰って床で宿題をするアハマド少年の向こう側に開け放たれたドアから洗濯物が風に吹かれているシーンがすごく好き。(上の画像)
 さてこのままかみあわない、かみあわないじゃ単なる悲喜劇にすぎないところに、監督は見事なジョーカーを用意した。それは老人がほんとアハマド少年にお構いなく「ほれこれをノートにはさんで押し花にしろ」と渡した花が、最後に思わずほっとにっこりさせてくれるのだった。
 
Khane Doust Kodjast
監督・脚本 アッバス・キアロスタミ
撮影 ファルハッド・サバ
美術 レザ・ナミ
出演 ババク・アハマッドプール / アハマッド・アハマッドプール / ホダバフシュ・デファイ / イラン・オタリ
★★★★☆




2002年08月04日(日)
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