nikki-site 雑文速報
 あいうえお順INDEX 



 ▼ デレク・ジャーマン『ラスト・オブ・イングランド』 (87 英)


 この徹底的に構築された映像というのには正直びびってしまう。実際に映像勝負の映画だからね。デレク・ジャーマンに関して難解だとか、前衛だとか、言われているけれど、ボクは超現実主義(シュールレアリズム)というよりあえて極現実主義と勝手に名付けてしまいたいと思う。それくらい極めて現実を表現しすぎていて、ここまで突きつけられると怖いのだ。
 それでデレクが表現しようとしていることのどれだけがボクがわかるのかといえば(シェアできるじゃなくて、うんうんなるほどそいうことなのねというわかる)、恥ずかしながら全然(笑) ということはやっぱり「難解ね」と言うてしまってもいいのかも。
 じゃ、難解だから、退屈なのかというと、全然そうでなくておもろくてしかたがない。わかる、わからない以前の原初的に迫ってくるものがある。その一点で辛うじてデレクとボクがつながっているというおもしろさだ。この迫力ってのはそれはすごいよ。ボクが観た映画の中で断トツのトップでしょ。
 映像の美しさというのは半端なもんじゃない。だからといってうっとり見とれてられるような映像でない。それに絡んでくる音楽というのも半端じゃない。ただし音が入ってホッとするところがあるのも事実。だぁーーーっと無音のまま流れて行くシーンのほうが実は怖い。普通じゃないね。普通は恐怖心などを煽るために音が使われているところがあるけれど、逆に音がないために、こちらの落ち着きがなくなってしまうのだ。この落ち着きがなくなってしまうというのは、意味不明であればあるほど落ち着かない。恐怖であろうが、感嘆であろうが、それが何に由来するのかわかっていればいるほど、観る側は納得し共感することもできるし、批判することもできる。ところが正体不明のものがじわじわとしみ込んでくる落ち着きのなさ。確実に侵入してきてるのはわかるのにそれがなんであるのかわからないから落ち着かないのだ。
  はっきり言ってお薦めできません。(そういうと観たくなるもんでしょ(笑)) 思うに難解だという以前に、イメージを自分の中で紡ぎだす、再構築する作業を怠っていないか。どうしてそのような作業をする必要があるのだ、わざわざ映像としてイメージを提示されているのに、どうして観る側が自分でイメージを再構築しないといけないのか、という人にとっては退屈きわまりない映画だと思う。それでもユニオンジャックの上でのファックなんかひどく直線的だと思うんだけどな。ボクはラストのシーンで、一枚のを絵を想い浮かべてたけれど、実はタイトル"Last of England"というのは、この『Last of England(最後の一瞥)』からとられたという。ボクはボクで全然違う絵を思い浮かべてたのだけれどそれもまた良し。そして"Last of England"というのは文字通り『大英帝国の最後』でもあるし、大英帝国だけじゃなしに、『世界の最後』と思うのはボクだけじゃないだろう。
 ちなみに冒頭で襲い掛かって姦ってしまう絵画は、これのデレクの前作、16世紀イタリアの画家『Caravaggio』の「Profane Love」←ネットで探したが見つからず。電子化されたもの持ってる人いたら下さい。

CinemaScape  ★★★★★  



2001年12月09日(日)
 ≪   ≫   NEW   INDEX   MAIL   HOME 


My追加