nikki-site 雑文速報
 あいうえお順INDEX 



 ▼ ピーター・グリナウェイ『ZOO』 (85 英)



 トップのシーンで犬を引きずっている男が二人。その引きずり方が何やら芝居がかっていて、何かやってくれるぞと期待わくわく。そして、そのタイトルバックからいきなり、マイケル・ナイマンのアップテンポの音楽が急き立てていく、海老の足のようにざわざわざわざわと。怖いとか、グロいとかじゃなくて、ナイマンの音に急き立てられるのは観てる側の心臓の鼓動、確実に心拍数が上がっていくのがわかる。高血圧の人、要注意! およ、『ピアノ・レッスン』も『髪結いの亭主』もマイケル・ナイマンだったのね。この『ZOO』では思いきりツボにはまっとります。この音のやばさは全編を通じてキープされている。
 そして、もう堪忍してぇ〜なのは、キューブリックも顔負けするほどの左右対称の映像のオンパレード。これでもか、これでもかの左右対称に攻めまくられて、終いにはポーズまでかけて、フラミンゴの数まで勘定したじゃないの。さすがに儂ら以上に身勝手なフラミンゴまで制御することはできなかったようだが、をー、をー、やっとるやっとると、話の流れなどそっちのけで楽しんでる始末。
 へ?話のストーリー? なんやようわからん。なんでカタツムリなんだか、なんで海老なんだか、なんで烏賊なんだやら、ようわからん。辛うじてわかったってのは、なんでこんなに左右対称にこだわるのか。をー、そうなんやぁ、なるほど、なるほど。それよりもカタツムリ、海老、烏賊の動きがすごくおもしろい、美しい。もう「動物わくわくランド」の世界よ。海老の脚の動きなんてもう最高よ。これがまたナイマンの音とばっちり。
 をっと忘れちゃいけない。これ、きっと動物愛護フリークの人は、いきなり激怒しますでしょう。右後肢がなくなったゴリラが出てくるのですね。まさか映画のために切り落としたりするわけないでしょ。でもそれが人間だったら、演技やら何やらで何とかごまかしも効くのだろうけれど、どういうふうにゴリラの後肢を失くしたのやら。このゴリラの三本足が伏線になって、そこに左右対称が絡んでくるわけ。ここらは欠損の美学、そして対称の美学のせめぎ合いと言ってもおかしくないところ。そこに腐敗の美学―林檎が腐っていく、海老が腐りながらも飛び跳ねる、シマウマが干からびていく、エンゼルフィッシュがみるみる干物になっていく―が絡んできて、もうシュールシュール、何やら考えるのも面倒くさくなってきて、流されるままの2時間。
 ネクロマニアや、グロもん好きな人には「なんじゃい、これ」と拍子抜けするかもしれないけど、こっちゃの感性を弄んで欲しい人にはもう最高でしょう。まるで冒頭のワン公になった気分よ。
ちなみに原題『A Zed & Two Noughts』とはひとつのZと2つのO、つまりZOO

CinemaScape  ★★★★  




2001年12月03日(月)
 ≪   ≫   NEW   INDEX   MAIL   HOME 


My追加